奥さん

ついに冬休みに入る。

だから先生に会えなくなる。

悲しい、悲しい時間を過ごすことになる。

…先生にね。

「良いお年を。奥さんと愛を語り合ってください。」

って言った。

笑いながら言ったから先生は気づいてないと思うけど、

私はすごく辛かった。

じゃあなんで言うの？

しょうがないでしょ。

先生の幸せを壊したくないもん。

私だって先生と一緒にいたいよ。

けどダメなんだ、私じゃ。

最初からわかってた。

叶わない恋だって。

どうあがいても、絶対叶わない。

…そんな私の恋。

ありがとう。

今日の社会が終わったあと。

先生が忘れ物してた。

だから私、先生に届けようと思ってさ。

誰にも気づかれないように、そっと取って先生に渡した。

「ありがとう。」

そう言われた。

嬉しかった。心がやすらいだ。

ありがとう。

その一言が、こんなに嬉しいなんて。

先生ね。

授業で使ったもの、教室によく忘れるんだ。

だからその度に私が誰にも取られないように先生のところに持っていく。

その度に「ありがとう」って言われるから、

その度に先生と話せるから。

だから私はこれからも、忘れ物を届けるよ。

めんどくさいなんて思わない。

…だって、先生のためだもん。

信じる。

今日の部活の時間。

先生が野球部の生徒に怒ってた。

それもかなり怒鳴ってて……

ちょっと怖かった。

……噂でね。

先生が、生徒に体罰をして今の学校に飛ばされたって聞いた。

でも。

私は信じるよ。

先生はそんな人じゃない。

先生は、生徒に体罰するような人じゃない。

先生は、みんなが思ってるよりずっと優しくて、生徒のことをちゃんとわかってる。

……みんなが噂するような、ましてや体罰をするような先生じゃないから。

私は、何があっても先生を信じる。

……そう決めたから。

せんせー。

今日の社会の時間。

復習テストが終わって、授業内容に触れたとき。

いきなり先生に当てられた。

心が揺れた。ドキっとした。

恋ってこんな感じなんだなぁ。

…せんせー。

不意打ちはダメですよ…。

社会の時間。

社会の先生。

それが私の好きな人。

だから社会の時間は楽しいし、どんな時より笑顔になれる。

しかも、自分の席が一番前だから、

誰よりも先生を近くで見られる。

これより嬉しいことなんてないよ。

先生は、私を笑顔にしてくれる。

私を、私の心を、喜びで満たしてくれる。

そんな社会の時間。

一日の中で一番好きで、大切な時間。

その時間を、これからも大切にしていこう。

先生。

私の好きな人。

それは学校の先生。

何故かわからないけど、好きになっちゃった。

先生が知ったらなんていうかな？

…きっと、いや、絶対迷惑だよね。

そんなの知ってる。

でも、私は…先生が好きなの。